幸せにしたいのは君だけ
誰かに反対されて、彼の気持ちが変わったりしないだろうか? 

釣り合わないと思われないだろうか? 


考えすぎだとはわかっているけれど、どうしても二の足を踏んでしまう。

今までは彼氏の存在を隠したりはしなかったのに。

どうして圭太さんには自信をなくしてしまうのだろう。


なによりも――私は澪さんにまだ報告できていない。

本来なら一番に話さなくてはいけないのに。

圭太さんにとって大事な幼馴染みなのだから。


『別に構わないんじゃない。わざわざ報告しなくても』


一度、その旨を圭太さんに電話で尋ねてみた時、そう返答された。

ずいぶん素っ気ない口調に、もしかしたら報告されたくないのかと思ってしまったくらいだ。


『澪に会った時にでも、伝えるよ』


反対する理由はなかった。

私よりも断然、付き合いの長い圭太さんが報告したほうがいいに決まっているだろうし、海外赴任中とはいえ、同じ会社に勤務しているのだから話す機会が多いのも頷ける。

どこにも不自然な点はない。


それなのに、どうして心がざわざわするのだろう。


『……澪さんに報告するの、気が進まない?』


可愛くない、嫌な聞き方だとわかっていた。

それでも尋ねずにはいられなかった。


『気が進まない、とかじゃないけど。なんか改めて言うのって……困るな』


呟くような声に、心がスッと冷えた。

“困る”という単語が胸を切り裂く。


どういう意味?と軽く尋ね返したらよかったのかもしれない。

それでも喉の奥に声が張り付いてしまったように言葉が出てこない。


結局、圭太さんに任せるとしか言えなかった。

どうして今になって、こんなにも弱気になってしまうのだろうか。


彼は私を選んでくれたのに。

澪さんではなく私を好きになってくれたのに。

なぜ自信がもてないんだろう。

これから先、私はずっと澪さんの存在を気にしてしまうのだろうか。
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