幸せにしたいのは君だけ
終業時間になり、帰り支度をすませた私はバッグからスマートフォンを取り出した。

今日は一体何度この動作を繰り返しただろうか。


彼からは、相変わらずなんの連絡もない。


仕事が立て込んでいる?

急用ができた? 

まさか忘れてしまった? 

……迎えに来る、なんて本気ではなかったのだろうか。


小さく溜め息をつく。

最近こうやって溜め息ばかりついている気がする。

振り回されているのは私ばかり。

彼は、きっと私みたいに仕事が手につかなくなったりしないだろう。


だって想いの深さが全然違う。

最初はこんなにも圭太さんを好きになるなんて思いもしなかった。


恋愛なんて全然楽しくない。

ただ、胸が痛いだけ。
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