幸せにしたいのは君だけ
12.最愛の宝物
「佳奈」


夢うつつの中で、甘い声が私の名を呼ぶ。

髪を優しく撫でられている気がする。


「佳奈、可愛い」


きっと世界中探してもこんなにも私に“可愛い”と言ってくれる人はこの人しかいないだろう。

ゆっくりと重い瞼を開けると、そこには大好きな人がいた。

無意識に手を伸ばすと、ギュッと指を絡められる。


「寝起き、可愛すぎだな」


……寝起き?


そのセリフに頭が敏感に反応する。

眠気が一気に消えていく。


至近距離にある綺麗な面立ちの恋人は、空いた片手で私の髪を梳いている。

窓からは明るい日差しが差し込んでいる。


ちょっと待って……なんでこんな朝から圭太さんが……。


そこまで考えて思い出す。


そうだ、私、昨日……!


記憶が猛スピードで戻ってくる。

今の状況を理解した途端、恥ずかしさで身体が熱くなる。


「おはよう、佳奈」

「お、おはよう、ございます……」

「残念、起きたか」


ふわりと相好を崩す圭太さんは、朝から凄絶な色気を放っている。

寝ぐせひとつ見当たらない。


なんでこんなに朝から完璧なの……!

ああ、もう、今すぐシーツの中にもぐりこみたい。


昨日散々泣いたせいか、目が少しヒリヒリする。

みっともなく腫れていないだろうか。
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