幸せにしたいのは君だけ
「俺はやっぱり九重の物件が一番好きだけどな」


店を出て、お互いの指を絡めて歩き出した圭太さんが口にする。


「ほ、本気で買うの?」

「ああ。そうでないといつまでも佳奈と暮らせないから」

「別に賃貸でも……」

「佳奈とずっと落ち着いて暮らしていきたいから。ちゃんとふたりの居場所として残したい」


賃貸だといずれ引っ越さなきゃいけないだろ、と当たり前のように言う。

本当に、この人はどれだけ私の心を乱すのだろう。

どれだけ好きにさせるのだろう。


結局、同棲の件を了承して、いざ物件をふたりで探し始めたのはつい最近だ。

私はてっきりどこかに部屋を借りるのだと思っていたのに、彼は購入すると言い出した。


『佳奈が気に入る場所、部屋を選んで』


そう言い切った婚約者に迷いはなく、逆に私がうろたえてしまった。

私も一緒に暮らすのだからと、資金について相談をした。

貯金は少しはあるけれど、家の頭金になるかどうかくらいだ。

それでも今後も働いて少しでも一緒に負担できたらと思った。

すると婚約者は当たり前のように言い放った。


『佳奈に負担させるつもりはまったくない』


その件に関してはまったく聞き入れてもらえず、さすがの御曹司の資金力に舌を巻いた。


「週末、もう一度モデルルームを見に行こうか?」

「う、うん」


彼が購入を検討しているのは、九重グループが開発した新築分譲マンション。

先日、内見をした際の間取りを思い浮かべる。

金額を考えるだけで恐ろしい。

しかも彼のご両親は大賛成だという。
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