紡ぐべき糸

10


「大丈夫?落ち着いた?」


そっと 顔を上げた啓子に 聡は優しく言う。
 

「はい。すみません。」


聡の優しい言葉に また涙汲みながら 啓子は答える。


「いや。気にしないで。大人気ない言い方 しちゃって 俺のほうこそ ごめんね。」



こんな所で 泣くなんて 多分 迷惑なのに。


聡は そんな素振りを見せずに 優しく言う。
 


泣いたことで 啓子の心は 少し 軽くなっていた。



しかも 聡の前で 泣いてしまうなんて。




最悪だと思いながら これ以上 悪いことはないと 開き直るような 気持ちになれた。
 




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