紡ぐべき糸

啓子を 見つめ続けて 半年以上 過ぎた頃 美咲から 結婚の知らせが 聡に届いた。


《おめでとう、美咲。でも すごく寂しいよ。もう美咲に 俺の手は 届かないね》

美咲の相手は 同じ会社の 先輩だという。


一流企業の エリートサラリーマンと 結婚する美咲。


完全に 聡とは 違う世界に 羽ばたいて行った。
 


聡は 寂しさと同じくらい ホッとしていることに気付いた。


啓子に 告白できなかったのは 美咲が 聡を求めるかもしれないという思いが どこかにあったから。
 

聡の思いを 受け止めて 聡に 夢のような時間を くれた美咲。

もし 美咲に求められたら 聡は 応えてしまうだろう。


聡は 少し 美咲に 求められることを 待っていた。
 


でも美咲は 上昇気流を掴んで どんどん 高く飛び立っていく。


聡を 求めることなど ないと気付く。
 

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