紡ぐべき糸

軽く ビールで 乾杯をして 美咲は 甲斐甲斐しく 肉を焼いてくれる。
 

「さすが 東京の肉は 柔らかい。」

聡が言うと 美咲は 声を出して笑った。

美咲の笑顔が嬉しくて 楽しい話題を 捜す聡。


会社の事、家族の事、同級生の事。


いつも以上に 聡は 饒舌になっていた。
 


会計で 財布を出す美咲。
 

「俺が奢るよ。カッコつけさせて。」

と聡が言うと 美咲は 優しい笑顔で頷いて、
 
「ありがとう。ごちそう様。」

と言った。

聡の大好きな 美咲の笑顔。


美咲は 二十才の時よりも 研ぎ澄まされて 洗練された 都会の女性になっていた。
 

「腹いっぱいだ。」

と言う聡に
 

「私も。美味しかったね。」


と美咲は言う。


美咲が 帰ると言うのが怖くて 聡は 美咲の肩を 強く抱く。




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