紡ぐべき糸

「ねえ、美咲。お正月は 旅行しようか。」

昼間は 二人で街を歩く。


一瞬も離さない というくらい 美咲を 抱き締めて歩く聡。
 

「旅行か。しばらく 行ってないなあ。」

美咲は 嬉しそうに 聡を見上げる。
 

「寒いからさ。温かい所に行こうよ。」

美咲の髪を 撫でながら 聡が言うと、
 

「沖縄。」

と美咲は言う。
 
「グアム。」

と言う聡に
 
「海外?」

と美咲は 驚いた声で言う。


頷く聡を 照れた目で見つめて 微笑む美咲。


歩いていて 目に留まった 旅行会社の前で
 

「ちょっと パンフレット 見て行こうよ。」

と聡は 美咲の手を引く。
 

ビーチリゾートの棚で パンフレットを 見ている二人は 店員に 声を掛けられる。


話しを 聞いているうちに 聡はグアム旅行を 予約してしまう。
 

「本当にいいの?」

見送られて 店を出ると 美咲は 責めるように 聡を見る。
 
「たまにはいいでしょう。俺 美咲に 何もしてあげられないから。」

二人分の旅行代金を 聡は支払っていた。
 
「でも。」

と言いよどむ美咲。
 

「いいの。俺が 行きたいんだから。美咲の水着姿、楽しみだなあ。」

聡が 悪戯っぽく言うと 美咲は 
 

「だから沖縄って言ったのに。」


と拗ねた顔で 聡を見た。
 
 

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