紡ぐべき糸

22


「林さん 少し俺のこと 話してもいいかな。」

何故 そんな気になったのか 聡はわからない。


でも その時聡は 無性に 美咲のことを 啓子に 聞いてほしいと思った。
 

「はい。もちろん。」

と啓子は微笑み 聡は 美咲のことを話し始めた。
 

「彼女 東京にいるって 知っているよね。俺 彼女に 結婚を申し込んだの。八年振りに会った時。彼女 考えさせてって 言ったよ。当たり前だよね。俺達 付き合っても いなかったから。ずっと 俺の片思いで。彼女にとって 俺は ただの同級生だから。」

聡は 啓子の方を見ずに 前を向いたまま 話し続けた。
 

「俺 時々 東京に 彼女に 会いに行って。東京で過ごす週末は 別の世界でさ。楽しいんだ。夢みたいに。でも俺 それで良いと 思っていた。自分から 結婚を申し込んだのに。」

啓子は 体を横に向けて 聡の方を向いて 頷きながら 話しを聞いていた。
 

「彼女 丸の内の 一流企業で 働いているんだけど 彼女を 呼び戻す口実に 結婚を使ったんだ。勝手だよね。自分の都合ばっかりで。」

聡と美咲のことは 啓子しか知らない。

仲の良い 中学の同級生にも 聡は 話せなかった。



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