恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】


精神病の治療法は、そのほとんどが臨床心理に関わりのない人間からしたら酷いショック療法のように思えるようなものが多い。

要は患者が恐怖を抱いている物や状況に直面させる事で不安に慣れさせていく事が目的だ。

その原理でいけば、男である俺と一対一で向かいあって二人きりでホテルラウンジで食事…しかも名目は見合いなんてこの状況も、暴露療法においての治療の一環になるのだろう。

それなら。

「これも怖いか?」

そう言って、沙和の顔を覗き込むようにして少しだけ顔を寄せた。

テーブルを挟んでいるし距離的にはほんの数センチ近いた程度だったが、それでも急に顔を寄せられた事が怖かったらしく沙和の顔色が途端に青ざめる。

あっと思った時には、背を椅子の背もたれに押し付けるようにして身を引かれていた。

「…悪い」

反射的にそう謝って距離を取る。
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