恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

女に顔を寄せて怯えられたのも、女を怖がらせた事に対して罪悪感を抱いたのも初めてだった。

「私こそ、ごめんなさい」

沙和がそう言ってのけぞっていた体勢を元に戻す。その身体が少し震えている事に気がついた。

俺が故意的に怖がらせた。その事実が刺さって痛い。

「そんなんじゃ、結婚どころか男と交際するのも無理だろうな」

決して物腰柔らかとは言えない自分の物言いは、長年治す気すら無かったのだから今も器用に変えられない。

沙和が心なしか肩を落としたのが分かる。

これ以上傷つけたくないし怯えさせたくないと思うのに、まるで嫌味のような言葉しか返せない自分が情けなかった。
 
「そうですよね、多分難しいです」

そう言ってぎこちなく笑って返す沙和に、いよいよ返しに困る。

「まぁそうだろうな」
< 113 / 286 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop