恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
コートを羽織りながら鞄の紐を手に持って、少し高めのヒールの音を鳴らしながら小走りで駆寄った。
「砂川君…っ」
名前を呼ぶと、追いついたその後ろ姿が振り返る。
「相澤?」
砂川君は驚いたように目を丸くして私を見た後、やがてその目尻を下げて微笑んだ。
「偶然だな。いきなりで驚いた」
「私もびっくりしたの、車の窓から砂川君が歩いてるのが見えたから」
息を切らしながらそう言って私も笑って返す。
──土曜日の午後2時。クリニックは土曜日の午後は休診だから、砂川君は仕事帰りだろうか。
「砂川君、仕事帰り?」
「あぁ。相澤も用事は済んだ?綺麗な格好してるけど」
「えっ」
砂川君の言葉に、今日は用事があるからと連絡して毎週土曜日の午前中に入れていた診療をキャンセルさせて貰っていた事を思い出す。