恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

私がきちんと椅子から降りた後、羽瀬さんがそう謝ってすぐ私から手を離した。

いつもの私なら、どんな理由があっても男性に触れられたら酷く動揺してしまう。だが、今のはまるで平気だった。

──それを遙かに上まわる恐怖に直面したら、その他の事などまるで自分の神経に届かない。


「沙和、どうした?」

「ぁ・・・」

恐い。怖い。横を向けない。嫌・・・


「俺が、何か驚かせてしまったかな」


左耳に響く声に、まるで身体が支配されているかのような感情に陥った。


「・・・・・・っ」


知っている。

──ねぇ、謝ってんの?沙菜のかわりに生きていてごめんって。ねぇ、沙菜を身代わりにしてごめんって。でも謝っても沙菜は帰ってこないよなぁ。

私はこの声を知っている。

──じゃあ、お前は忘れ形見になれよ。
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