恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】




「沙和、お疲れ様!」

お菓子を持って綾香の元にかけよると、綾香はそう言って優しく頭を撫でてくれた。

──これまで回避してきた事に向き合う事で、恐れていたような事態は起きないと認識するための治療だ。

ふと砂川君の言葉が蘇る。

冷静に考えれば、男性店員のレジで会計をする事に何の危険もある筈が無いのだ。それを実際に行動に起こす事で感覚で学んでいく。

凄く緊張したし、終始ビクビクとしていて絶対に挙動不審なお客さんだと思われただろうなとは思うけれど、きちんと達成出来て良かった。


この調子で少しずつ治療を頑張っていけば、いつかは私もきっと普通の人に戻れるようになるかもしれない。


綾香に頭を撫でられながら、
そう心の中で呟いた。








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