恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
(560円、560円…)
手にどっと汗をかきながら財布を開き、細かいお金がなかったので1000円札を一枚トレーに置く。
「1000円お預かり致します。
440円のお返しとレシートです。」
お釣りとレシートを差し出されて、それを受け取ろうとする手が伸びないままに一瞬フリーズする。
「………。」
これは、これまで回避してきた事に向き合う事で、恐れていたような事態は起きないと認識するための治療。
(大丈夫、何も危険な事なんてある筈ない)
「ありがとう、ございます」
脈が早鐘を打つのを感じながらも、手を伸ばしてそれを受け取る。
お金を手渡される瞬間に店員さんの手が少し触れ心臓が跳ねたが、ビクっとしないように堪えてから小銭を財布にしまった。
そして、小さな袋詰めされたお菓子を両手で受け取る。
「ありがとうございました」
会計が済んだ合図である店員さんの一言に安堵し、ぺこりと会釈してレジを後にした。