恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

そんな砂川君の言葉に背中を押されて、ゆっくりと口を開く。その時、砂川君がさっき取り出して机に置いていた小さな機械のボタンにそっと触れたのがわかった。

(…もしかして、レコーダーかな)

そう心の中で呟きながら、私はゆっくりと震えそうになる手を片方の手で押さえつけながら、震える声で静かな沈黙を破った。



「わ、私が大学四年生の時に、お姉ちゃんが高校時代から付き合っていた人と結婚する事になって。その人は私も高校生の時からお世話になっていた先輩で…名前は、あ、」

その名前を口にしようとすると一瞬背中がゾクっとして口籠った。
一旦呼吸を整えた後に、また開口する。

「天津、玲二。天津先輩の家は兄弟が多くて、それに天津先輩は長男じゃなかったから…二人の経済面が落ち着くまでの少しの間、天津先輩がうちに婿入りする事になって…。

えっと、私の所は母子家庭だから、母と、姉と、天津先輩と、私で、暮らす事になって。

凄く辛かったんだけど、少しの間だからって…。
あ、辛かったっていうのは、天津先輩がその、私が元々付き合ってた人だったから」


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