虹色アゲハ
「料理も美味しいし、すごく落ち着くけど…
ここ選んだのって、あわよくばとか考えてない?」

「あ…バレてた?
じゃあ正々堂々といくけど…
ベンチシートだし、隣行ってい?」

「ストーカーしといて、そこ遠慮する?」

「…じゃあ、キスもしてい?」
隣に移動してきた鷹巨に、そう見つめられ…


「…ん、いいわよ」

応えるや否や、後頭部に手が回されて。
甘いキスが絡み込む。


その甘さに溶かされて…

また夢中で、互いに唇を求め合うと。


「好きだよ、聡子…」

その瞬間。
揚羽の胸は、切なさと罪悪感で締め付けられる。


その気持ちには応えてあげられないのに…
その甘さは必要で、もっと欲しくてたまらなくて。

この前も、そしてこの先を見据えた今も…
結局利用している自分に、遣る瀬無くなったのだ。


「ごめん、鷹巨…
やっぱりこれ以上、利用出来ない」
キスから逃れて、そう俯くと。

「…俺は利用して欲しいのに?」
切なげな声で問いかけられる。

「だから私が嫌なの!
そういう気持ちを利用するのが、一番許せない事だから」

そう、お金を取らないだけで…
それじゃ赤詐欺と変わらない。


「…そっか。
じゃあ俺の事…
好きか嫌いかだったら、どっち?」
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