虹色アゲハ
「何か掴めた?」

数日後、揚羽は倫太郎の家を訪れて…
久保井の調査経過を確認していた。


「や、情報操作されてる。
けど、久保井も名義の女も、たぶん組織ぐるみで動いてる。
それも、下手に手ぇ出せないくらいヤバめの」

「そうなのっ?」

どうりで、と…
憎らしいほどの余裕さや、完璧なまでに手掛かりを残さない狡猾さに合点がいく。


そして思わず。
名義の女はただの仲間かと、どこかホッとしてしまい…

慌てて打ち消そうとした矢先、タイミングよく鷹巨から電話が入る。


「ちょっとごめん」

倫太郎に断りを入れて、縋る気持ちで電話に出ると。


『もしもし聡子っ?今大丈夫?』

「…大丈夫よ、どうしたの?」

まるで胸の内を心配された気分になって、心がほころぶ。


反して倫太郎は、客に対したものとは違う優しげな口調に…
相手は岩瀬かと、胸を痛める。


『今さ、お客さんから行列が出来るケーキをホールでもらったんだけど…
モンブランとか食べれる?』

「食べれるどころか、大好きよ?」

『良かった!
じゃあ仕事が終わったら一緒に食べよ?』

「嫌よ、太るじゃない。
1人で食べたら?」
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