虹色アゲハ
それがただのネックレスなら、置いて行っても問題はないはずで…
なのにどこにも見当たらず。

不自然な大きさといい、内部に極小カメラが仕込まれていたんじゃないか察知する。


それを裏付けるように…
外されたのはその役目を終えた後で、望が手に取る前で。
しかも実に巧みな流れで、気付かれずに回収していて。


相手は抜かりない詐欺師だ。
恐らく勝負を持ち掛けてきた時には、こっちも詐欺師だとバレていたんだろう…

そこまで考えが及んだところで、望は悟った。

二重詐欺にあったのだと。


そう、一度詐欺被害にあった人は、それをネタに騙しやすく狙われやすい。

そう合点がいった瞬間。

「ふっっ…ううっ」
嗚咽が零れた。


結局、自分は…
いつまで経っても、どこまでいっても、そういう対象でしかないんだと。

愛した人に、同じ人間に…
二度も裏切られて、二度も全てを奪われるなんてと。

消えてしまいたいほど、自分自身に失望する。


全ての詐欺データやそれに伴う偽造書類。
全ての通帳や印鑑も、携帯やPCも。
そして、手に入るはずだった幸せも。
そう…

私は鷹巨まで裏切ったのにっ!
胸が激しく抉られる。


心も身体も裏切って…
あんな男に奪われてっ…
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