虹色アゲハ
「じゃあ俺が払う。
女に奢られんの、シャクだし?」

「くだらな…
でもそう言うなら、素直に甘えさせてもらうわ」

「好きなだけ甘えろよ。
…や、せっかくだし?」

思わずドキリとしたものの、揚羽はそれを冗談でかわす。

「へぇ、ずいぶんデカい口叩くじゃない。
じゃあ思いっきり飲んで、酔ったら介抱してもらわなきゃね」

介抱!?
今度はその2文字の衝撃に、胸が膨らむ倫太郎。

「別にいいけど…
襲われても文句ゆうなよ?」

「そんな気さらさらないくせに」
鼻で笑った揚羽に…

「……よくわかってんじゃん。
アンタには絶対手ぇ出さねぇから、安心して飲めよ」
同じく鼻で笑って、心を潰しながらそう返す倫太郎。


「じゃあ倫太郎も付き合ってよ」

「いや車だし俺のが弱いのに、介抱出来なくなるだろ」

「だったら逆に介抱してあげようか?」

「ふざけんなよ。
こっちは襲われたくねぇし」

「は?あんた殺されたいの?」

ハハッと、楽しそうに笑う倫太郎。


そして揚羽も、倫太郎の言葉を寂しく感じながらも…
こうやってふざけ合う時間を楽しく思っていた。

そして…
安心出来るその存在を、信じられるかけがえのない居場所に思えていた。



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