今日、俺が死んでいたようで
私の腕を掴み、また歩こうとする私を阻止した。


「なァに」
「なァに。じゃない!」


ご丁寧に俺の声と口調、表情まで真似ている如月君。

正直言って如月君、結構物まねが上手いと思う。


「如月クゥン、たまにはリラックスも大切だぜ?」
「アナタは気を抜きすぎなんだ!」


するりと如月君の手を私の腕から離して太陽に照らされきらきらと美しく輝いている川に向かって歩く。


「ってアナタは!」


私の腕を、また掴もうとする国木田君を眺めながら体を斜めに傾けた。

重力に従って、川に向かって落ちる体。

如月君が、またか、と呆れような顔でもう一度手を伸ばしたけど、それは何も掴むことはなかった。


水の飛沫音が耳を包み込む。

憎らしく輝く太陽を、睨みつけた。

苦しいだなんて、そんな大層な感情はなかった。

けど、ちょっとだけ苦しいか。なんてな。

きらきらと輝く水を眺めていた。

なんとなく、如月君の声が聞こえた。

帰ったら書類整理、やってくださいよって。

そう聞こえた気がした。


(ああ、綺麗だ)


こんなにも透き通っている水を見つめた。

正直言って、この世界は醜いと思う。

けど、その世界の片隅にはこんなにもきれいな物が残っているのだと、自分でもよくわからない妙な感情抱いている。

ごほりと、泡が上へと浮かんでいく。

涼しい顔で泳いでいる魚を盗み見る。


いつも、無意味なことをしている。

死ねないくせに、幾度となく自死を繰り返して幾度も自身を嘲笑する。

いやらしく口角を上げにやりと目を細め己を指さす。


「君は馬鹿だなあ。死ねないくせにな」


ふと、俺を嘲笑う何かが見えた。
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