今日、俺が死んでいたようで
「ああ、そうだな」


一つ頷いた。

水音が聞こえた。波紋を広げ、何もない、真っ暗な場所に一人で立っていた。
しいて言うのならば、鳥居と神社と満月が遠くのほうにぼんやりと見えた。
足首ほどまで水が浸っていた。なぜか、冷たいなど感覚は感じなかった。


「ここは、どこだ?」


なんとなく、神社にいかねばならない気がした。

何もわからないまま、なんとなく、足を動かしていると大きな鳥居が目の前に広がった。
お稲荷様が像であるくせに、こんと泣いたような気がした。

無意識に、私の足は動いていた。


鳥居をくぐれば先ほどまであった神社も、満月も何もなくなって、一人ぼっちになってしまった。


寂しいけど

寂しくない。


よくわからなくて、自分の感情を制御できなかった。
溢れて出る、その感情を両手で抑えようとしても、それは砂のように零れ落ちていく。

いつもみたいに蹲って敵を罠にはめるように泣いていた。

けれども、それは本心で悲しくて寂しいような、そんな気がしてずっと泣いていた。
ふと、瞳の周りに小さな温もりがあることに気づいた。
それは、人肌ほどの温もりでとても心地よく、俺の行き渡る悲しみを塞いでくれていた。


「夜見」


ふと、俺の名前を呼ばれた気がした。
大好きな、お父さんとお母さんに呼ばれた気がした。


顔を上げれば、太鼓の音が聞こえてきた。

一つの灯が出てきて、次の瞬間、暗かったこの世界に一気に明かりが広がった。


太鼓の音、笑い声、キツネの鳴き声、子供の泣き声、そして、大切な仲間の声。
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