今日、俺が死んでいたようで
「こっち来ないでよ」


憎らしい君の声が聞こえた。


「お、間抜けちゃんだ」
「はァ!?」
「いつも俺の罠に引っかかってるからねえ」


ずっとずっと片思いをしていた__


「はは、笑わせてくれるわ! 何がマフィアの幹部よ! ただの子供じゃない!」
「それは君も同じだろう。そんな低身長でヒーロー? 君には無理な話だな」


__思い人


「……任せてよ、相棒」
「気持ち悪っ……」
「酷っ!」


だんだん、目の前が霞んで見えた。
思わず手を伸ばしたけれども、それは何かを掴むことはなかった。

聞こえていた音も綺麗な水も何も、聞こえなくて、見えなくなった。


「夜見!」


何かに惹かれるように目が覚めた。
ああ、やだなあ。帰ったら書類地獄だ。

そう思う意思とは反対に俺はのっそりと立ち上がっていた。

今日も、死ねなかった。
いいことなのか、悪いことなのか。
俺には、まるで死ねない呪いがかかっているようだった。


(不死身だったりしてな)

「はは、冗談はやめてくれよ」


思わず、心の中で呟いたことに返事をする。
空を見上げると、相も変わらず綺麗で、先ほど私が死のうとしていほどには思えないくらい、水が透き通っていた。

ふと聞き覚えのある声で呼ばれて、心は踊っていたもののつい感情とは反対に顔をしかめる。
俺は、言ったいつまで感情を抑えればいい?


「なんだい、おチビちゃん」


遠くのほうから椎名くんの声が聞こえてそちらに目線を送れば、案の定立っていた。
妙に彼女が焦っているように見えた。
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