月が綺麗ですね
「その……海崎さんを描いてました」

「へえ〜……。見せて」

あたしが返事をする前に、海崎さんはあたしの手からスケッチブックを取っていた。そしてジッと絵を見つめる。ヤダ、恥ずかしい……。

「すげえ!俺、こんな感じなんだ……」

恥ずかしさでいっぱいのあたしに海崎さんは優しく微笑む。とりあえずホッとした。海崎さんをかっこよく描けてるか自信なったんだよね〜。

海崎さんの似顔絵の続きを描いた後、あたしと海崎さんはいつものようにお喋りをする。海崎さんは音楽関係の仕事をしていて、時々歌を口ずさんでいた。

「その歌、海っぽくて素敵ですね」

あたしがそう言うと、「浜口さんをイメージして作ったんです」と海崎さんは頬を赤くする。

波の音が心地いい。海を見つめながら海崎さんが言った。

「海が、綺麗ですね」






海が綺麗ですね……あの海に溺れるようにあなたに溺れています。
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