月が綺麗ですね
「こんなところでしょげてどうしたん?やっぱり課長のこと?」

訛りのある声に私はゆっくりと隣を見る。すると、同僚の折原くんがコーヒーを片手に立っていた。その顔はとても優しげで、私は「うん、課長のこと」と素直に話す。

「そっか。あの課長、自分が気に入らんことがあると周りに八つ当たりするもんなぁ」

あんな上司にはなりたないわ、と言いながら折原くんは私の隣に座る。私は隣にいてくれることが嬉しくて、心の中にある全てを吐き出すことにした。

「私にも非があるってちゃんとわかってる。計算ミスをよくしちゃうし、折原くんみたいに仕事ができる頼りがいのある存在でもない。だからこそ、ちょっとでも周りと同じようになろうと努力しているつもりなのに……」

ザアッと私の心にも雨が降った。堪えきれなくなって、悔しくて、私の目から涙がこぼれる。

静かに泣き続ける私の頭に、ふわりと優しく手が乗せられた。折原くんがそっと私の頭を撫でてくれる。

「好きなだけ泣いてええよ。田中さんが頑張っとるの知っとるもん。また次頑張ればええの。ゆっくり自分のペースでええんやで」
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