つらい日々を支えてくれたのは課長でした【優秀作品】
「三沢は、2年前、違うと言ったはずだ。
 お前は三沢ではなく、親と興信所を信じた。
 それは、親のせいじゃなくて、
 自分のせいだろ。
 諦めろ」

課長は振り返ると、私の背中に手を回した。

「三沢、行こうか」

私は、課長と共に自動ドアを抜けて、外に出た。




ふぅぅっ

止まってた呼吸が、ようやく戻ってきたようなほっとした感覚。

「余計な口を出して、悪かったな」

隣で課長が前を向いたまま、ぼそっと言った。

「いえ、助かりました。
 ありがとうございました」

私が答えると、課長は、ふっと笑みをこぼす。

「よし、飲みに行くぞ!」

課長は私の頭をわしゃわしゃと撫でる。

「課長〜! どうしてくれるんですかぁ!」

私が今朝、気合を入れるために、がんばってゆるふわに巻いてきたセミロングの髪が、くしゃくしゃだ。

「ははっ
 悪い、悪い。
 大丈夫、それでも三沢は十分かわいいぞ」

えっ?
今、なんて……

だけど私は、それをあえて聞き返すこともできなくて……

髪を手櫛で整えながら、小走りで課長の後ろをついて行く。



この2年、本当に辛かった。

だけど、いつも「逃げるな」って言って、支えてくれる人がいた。

だから私は、これからも逃げずに頑張ろう。

前を向いて歩いていこう。



私は、課長の背中に誓う。

そして、呟く。

「ありがとうございます。
 これからもがんばりますね」

私の小さな呟きは、誰に届くこともなく、雑踏の空へと消えていった。




─── Fin. ───



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楽しみにしてます。

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次作品
『社長宅の住み込みお掃除係に任命されました』
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さらっと読める短編です。
こちらもぜひお楽しみください。
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