策士な御曹司は真摯に愛を乞う
私を支えて立ち上がらせてくれる彼に、私は弾かれたように抱きついた。


「っ……美雨?」


虚を衝かれた様子で、彼の身体が一瞬強張る。


「夏芽さ……私。私……」


彼の胸に顔を埋めて、なにを言っているかわからないまま、泣きじゃくった。


「どうした? 美雨。ここじゃ人目につくから、早く車に……」


肩に置かれた手に力がこもるのを感じながら、私は激しくかぶりを振った。


「責任……ですか?」


掠れた声で、必死に短い質問を紡ぐ。


「え?」

「愛してるなんて、嘘。プロポーズを考えてくれたのは……妊娠の責任……?」

「……!」


くぐもった声でも、ちゃんと彼に届いたのは、頭上で息をのむ気配でわかった。
その反応が、私の胸を鋭く貫く。


「酷……い。酷い、夏芽さ……」


いつかのように、彼を詰った。
でも、身体に回る腕を解き、突き放す力はなく、私はがっくりとうなだれた。
そして。


「……美雨? 美雨っ!」


切羽詰まったような声が、何度も私を呼ぶのを聞きながら、意識を失った。
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