策士な御曹司は真摯に愛を乞う
「わかりました。では、お気をつけて」


背筋を伸ばし、姿勢を正して言ってくれる先生に、私も「はい」と返事をする。


「退院しても、しばらくの間は、指示通りに通院してくださいね。なにか異常があれば、予約がなくても、すぐに来てください」

「はい。お世話になりました」


私は箕輪先生に笑いかけて、一人で病室を出た。
ナースステーションの前で一度足を止め、そこにいたスタッフに挨拶をする。
お世話になった看護師たちが数人、エレベーターホールまで見送ってくれた。
エレベーターに乗り込み、一階に着くと、広い外来ロビーを突っ切った。


午前中の外来診療が始まって間もない精算カウンターは、それほど混んでいない。
それでも、医療保険の申請や、傷病休暇の手続きに必要な書類を用意してもらうのに、二十分ほどロビーで待つ羽目になった。


病院名の入った封筒に収められた書類を受け取り、クレジットカードで精算を終え、今度は院内薬局に急ぐ。
箕輪先生に指示された次の外来診察は、二週間後だ。
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