策士な御曹司は真摯に愛を乞う
「こんなにたくさん。って言うか、サイズは大丈夫なの……?」


呆然としながら、スーツのハンガーを取り出してみた。
サイズの表示を見て、私は何度も瞬きをした。


どれもこれも、私のジャストサイズ。
なんで鏑木さんが、私の服のサイズを知ってるんだろう?と不可解な思いで首を捻ったものの、すぐに合点した。


今、私が身に着けているこの服。
持ち帰ってクリーニングに出してくれたのは、彼だ。
きっと、この服のサイズを参考にしたのだろう。


納得できてホッとしながら、私は床に置かれたローチェストに目を落とした。
鏑木さんは、『服』ではなく着替えって言い方をしていた。


――もしかして、下着も揃えられてる?
床に膝を突き、急いで引き出しを開けてみると……。


「っ!」


予感的中。
そこには、ブラジャーとショーツがぎっしり詰められていた。
そりゃあ、服だけ与えられて、下着がないのは困るけど。


「まさか、鏑木さんのセレクトじゃないよね……」


呆然と呟くうちにハッと思い当たって、ピンクのブラを摘まみ上げた。
焦りながら、サイズを確認して――。


「っ! か、鏑木さんっ……!」


勢いよくブラを引き出しに突っ込み、弾かれたように立ち上がった。


「鏑木さん! 鏑木さん!!」


狂ったように彼の名を喚きながら、私は部屋から飛び出した。
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