策士な御曹司は真摯に愛を乞う
「俺が君の下着のサイズを知ってたら、そんなに不思議?」


からかい混じりに言われて、私はさらに顔を火照らせた。


「当たり前です! だって、どうして……」

「服のサイズと、目測からの判断。それ以外、答えようがないかな」


口元に手を遣って、愉快気にくっくっと声を漏らす彼に、私は呆気に取られてしまった。
それだけで、ブラのサイズまで見抜けるもの?
私はまだ不信感を拭えず、無意識に自分の胸元を見下ろした。
だけど、鏑木さんまで同じところに視線を向けているのに気付き、


「……っ!」


反射的に両腕で胸を抱きしめ、彼の視線から隠した。


「そ、そういうことなら、納得します。えっと……ありがとうございました!」


なんだか、私のすべてを透視されているような、妙な感覚に陥る。
私は慌てて彼に背を向け、中ほどまで上ってきた螺旋階段を駆け下りようとして……。


「っ……美雨っ」


弾かれたような、鋭い声。
同時に強く肘を引かれて、一段下りただけで振り返った。


「鏑木さん……?」


見上げた彼が、顔を強張らせているのに怯み、おずおずと呼びかける。
鏑木さんは、ハッとしたように息をのみ、私から手を離した。


「っ、ごめん。つい……」


大きな手で口を覆い、くぐもった声で呟くと、スッと目を逸らしてしまう。
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