策士な御曹司は真摯に愛を乞う
何故か嬉しそうに目を細めるから、意表を衝かれ、口ごもってしまった。


鏑木さんが、執務机に両肘をのせ、顔の前で両手を組み合わせる。
その向こうから、私を上目遣いに見据えているのがわかる。
私は視線の遣り場に困り、目を泳がせた。


「黒沢さん。君を専属補佐に就けるよう、強引に命令した俺が、不満なのはよくわかってる」

「じ、自覚があるなら、控えていただけませんか」


虚勢を張って、つっけんどんな言い方をする私に、彼はまったく動じない。


「それは無理。当面の間はこの任に就くのがベストだと、君自身、理解していると思うけど?」


探る瞳の前で、私は返事に窮した。


「俺への不満を、腹に溜め込まなくていいよ。言ってくれて構わない。そのための『専属』なんだから」

「同居を強いられ、仕事への行き帰りも鏑木さんと一緒。その上オフィスでも専属補佐の任を命じられ、執務室で二人きり……。これじゃ、ほとんど軟禁ですっ」


もうすでに腹に溜め込んでいたからこそ、私は彼が言い終わるのを待たず、執務机に両手をついて言い募った。
鏑木さんは腕組みをして、長い足を組み上げながら……。


「ほとんど、というか。まさにその通りだね」


私を見つめて、平然と言って退ける。
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