契約結婚！一発逆転マニュアル♡
入社式で発表されていく配属先を聞き逃さないように、依舞稀は自分の名前が呼ばれるのを待った。

「緒方依舞稀、フロントクラーク」

「はいっ」

名前を呼ばれ、依舞稀の声が僅かに上ずった。

フロントクラークは、依舞稀が一番に希望していたところだ。

ホテルの花形といっても過言ではないところに配属してもらえた。

ドキドキと高鳴る胸を抑えつつ、同期となる四人の配属決定に耳を傾けていた。

入社式とオリエンテーションは午前中で終わり、午後からは各配属部署の研修が開始される。

その前の昼食は、ホテルのレストランの味を知ってもらうためにと、小ホールにビュッフェが用意された。

ざっと十種類くらいだろうか。

遠慮がちに少しずつ皿に取り口に運ぶと、依舞稀の口の中は幸せでいっぱいになる。

「おいしい……」

そう漏らせば「本当だね」「マジで美味い」などと次々に皆が呟き五人の表情が緩んだ。

美味しい食べ物は人を幸せにする力があると言われているが、本当なのだと実感できる。

食事が進むにつれて緊張も解れ、五人に会話が生まれ、次第に打ち解けていった。

全員が新卒で同い年ということも影響しているのかもしれないが、あっという間に団結することができた。

広報部に配属になった、瀧沢華（たきざわはな）、ベルパーソンの松尾瞳（まつおひとみ）、ドアマンの竹内悟（たけうちさとる）、厨房の安河内知晴（やすこうちともはる）、そしてフロントクラークの依舞稀。

この五人の会話は、午後の時間ギリギリまで途切れることはなかった。
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