契約結婚!一発逆転マニュアル♡
「ありがとうございます」

依舞稀はグラスを置いて、遥翔に向かって頭を下げて微笑んだ。

遥翔は依舞稀の言葉と笑みの意味がわからず、唖然としている。

その姿もまた、初めて見せてくれた遥翔の表情の一つで、依舞稀の胸がきゅんとした。

「全てをわかった上で遥翔さんが何もしなかったってことは、遥翔さんが私のことを信じてくれてたってことですよね?」

副社長としての立場からすれば、これでもし何かのトラブルに発展してしまえば、ホテルの名に傷が付きかねない。

そうなれば大きな損失に繋がることだってあるはずだ。

しかしそのリスクを背負ってでも依舞稀の行動を見守っていたということは、依舞稀の解決方法を信じていたということなのではないだろうか。

依舞稀は素直にそう考えた。

「ごめん……。確かにここまでの嫌がらせを受けてもなお俺に報告しない依舞稀の強さに、解決の糸口を感じたのもあるんだが、動きにくかったというのも理由の一つだ」

そんなことを素直に口にせず、一言『そうだ』と言ってしまえば終わる話だというのに、遥翔は自分のいいように話を盛ったりしない。

違うことは違うと、否定し謝れる人なのだ。

素直で真っすぐで男らしくて思いやりがあって……。

そんな遥翔を知れば知るほど、依舞稀はどんどん遥翔に惹かれていくのだ。

「遥翔さんはホテルをしっかり守ってください。私は遥翔さんの立場を守りますから。それが内助の功ってものです」

自分の存在が遥翔の重荷や邪魔になりたくはない。

そうなってしまえば、この関係は崩れ去ってしまうかもしれないからだ。

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