契約結婚!一発逆転マニュアル♡
遥翔がお風呂から上がってくると、ピカピカのグラスにワインを注ぎ乾杯する。

2人のリラックスタイムの始まりだ。

依舞稀はこの時間がとても好きだった。

チグハグで緊張していた遥翔との時間が、今では心地いいと思えるなんて、なんだか不思議な感じもするが、もう少しすればこの時間が当たり前になるのだろうか。

遥翔の作ってくれたピンチョスをつまみながら、依舞稀は口当たりのいいワインで喉を鳴らした。

ほんのりと依舞稀の頬が色付き始めた頃、遥翔はゆっくりと本題に入った。

「今まで依舞稀には言わなかったんだけどな。本当はお前と辰巳彩葉の件は八神から報告を貰ってたんだ」

思わぬ遥翔の言葉に、依舞稀のグラスを持つ手がピタリと止まった。

「俺と結婚したことで依舞稀に好奇の目が向いていることは知っていたし、いずれ何だかの形で良くない行動を起こす奴が出てこないとも限らない。そう思って八神に調査を頼んでたんだ」

「そうだったんですか……」

全然気付かなかったし、遥翔も八神も何も言わないものだから、てっきり何も知らないものだと思っていた。

遥翔の表情が申し訳なさそうに見えるのはどうしてだろうか。

こうやって自分で解決できるまでも守ってくれていたということが、依舞稀にとっては嬉しいことなのに。

「全てを知った上で、俺は依舞稀に何一つ手を貸さなかった。俺には俺で思うところがあったからなんだが、依舞稀に対しては申し訳ないことをしたと思ってる」

「遥翔さん……」

やはりそんなことでこんな表情をしているのか。

遥翔のその判断は間違ってなかったというのに。
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