契約結婚!一発逆転マニュアル♡
一瞬のうちに、そんな邪な考えを巡らせた遥翔に対して出した依舞稀の答えは。

「気遣ってくれてありがとうございます。でも、以前もお話しした通り、私は今の職場で頑張りたいです。もちろん……ご迷惑でなければ、ですけど」

「……迷惑なわけないだろう」

一瞬の間があったのは、遥翔の描いたエロ楽しい構図が粉々に崩れ去ってしまったからである。

依舞稀の性格上、こうなることはわかっていたし、あの妄想だって本気で叶えようと思っていたわけではない。

しかし……だ。

あまりにも自分にとって都合の良すぎる夢が、あまりにも呆気なく消えてしまったことに、心のダメージが思ったよりも大きすぎたのだ。

「依舞稀を一人で行かせるわけにはいかない。今日だけは俺もついて行かせてくれ」

もちろん依舞稀を守り見届けることが一番の目的ではあるのだが。

ここに一人でいたら、夢破れたショックで崩れ落ちそうになると思ったのも小さな理由の一つであった。

「ありがとうございます。さすがに今日は心が折れそうだったので、本当に嬉しいです」

敬愛も眼差しで依舞稀から見つめられ、遥翔の心は申し訳なさで少し苦しくなった。

「行こう。依舞稀はいつも通り笑顔でいればそれでいい。俺がついてる」

邪念を力いっぱい振り払い、遥翔はなんとか平常心を取り戻して、八神に「行ってくる」と告げて副社長室を出た。
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