契約結婚！一発逆転マニュアル♡
心と身体が満たされるということは、世界が大きく変わるということに他ならない。

一般的な人間が聞くと、この表現は大げさになるかも知れないが、遥翔にとっては正しくこの表現が正しい。

いや、この表現しかないだろう。

立場上、業務的には全て依舞稀中心に回されることはないにしても、世界は依舞稀中心に回っているわけだ。

依舞稀の姿を見る為に早く目覚め、隣ですやすや寝息を立てている依舞稀の頬を優しく撫でる。

依舞稀の笑顔を見る為に少し早めにベッドから出て、朝食を準備してコーヒーを淹れる。

ノーメイクでも美しい依舞稀が、スポンジやメイクブラシを滑らせるたび、更に美しくなっていくのを眺める。

どうしても勤務中は依舞稀と離れてしまうため、少しでもその時間を埋めるために、必ず時間を合わせて一緒に出勤する。

更に……更に……。

こういった具合に、もう遥翔の人生において、依舞稀を切り離して考えることなどできないほどだ。

あれだけ打算的に考えて依舞稀に近づいたというのに。

今ではすっかり社内だけではなく業界内でも、遥翔は『近代まれにみる愛妻家』としてその名を轟かせていった。

初めはあんなに『愛』に迷走し、一生自分には無縁だと思っていた『愛妻家』が、依舞稀といることでこんなにも自然に浸透し、自分の一部になったことに驚いていた。

だが今ではそうでなければ自分ではないと思えるほどに、依舞稀を愛してやまなくなっているのだ。

しかしふと思うことがある。

果たしてこの想いは依舞稀と同じであるのか……と。
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