契約結婚！一発逆転マニュアル♡
もともと仕事人間ではあったものの、家族を大切にしていた誠之助であったが、これをきっかけに、より以上に妻と子を愛するようになった。

大切なものが守れるのも、愛を注げるのも、全て命あってのみできること。

しかし遥翔にとってはその愛情の反動で、簡単に人を愛することができなくなってしまっていたのだ。

愛とは本当に尊いものであるということはわかっていた。

だからこそ遥翔は、父親のように大きな無償の愛を他人に向けることができなかったのだろう。

その愛情を今、依舞稀に注いでいるということを、遥翔は奇跡だと思った。

「5年目の定期健診後はホテル立ち上げもあって、本当に忙しくてな。幸い病気もせずだったものだから、緒方医師に会うこともなかったんだ。だからまさか緒方医師が亡くなっていたなんて知りもしなかった」

遥翔が副社長として成長し、業務を任せられるようになってから、誠之助は久しぶりに緒方医師の診察予約を取ろうとした。

そのとき初めて緒方医師が常駐医師でないこと、自分の検診や診察するために出張してきてくれていたことを知ったのだ。

どうりで受診前には必ず予約が必要だったわけだ。

それから誠之助は緒方医師のことを調べ始めた。

「調べていくうちに、ようやく依舞稀さんに辿り着いたんだ。そこで依舞稀さんの厳しい現状を知った」

「どういうことだ？親父は依舞稀のことを知ってたっていうのか？」

「え……？」

動揺を隠せない依舞稀は、困惑した表情で誠之助の言葉を待った。

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