契約結婚!一発逆転マニュアル♡
両方の利を取るために考えられた策略など、責められてもおかしくはない。

誠之助は罵倒されるのを覚悟で言葉を切った。

「あの……」

先に口を開いたのは依舞稀出会った。

理解できないとでもいうかのような表情で、誠之助と遥翔に代わる代わる視線を送る。

「寿弥って誰ですか……?」

「…………」

「は……?」

突拍子のない依舞稀の問いに、遥翔も誠之助も言葉を失った。

「そんな顔しないでくださいよ……」

眉を寄せた依舞稀に、遥翔は「八神のことだよ」と教えてくれた。

「ああ。なるほど、そうだったんですね」

恥ずかしそうにはにかむ依舞稀を、誠之助はまじまじと見つめた。

こんな話をした後だというのに、少しも腹立しさを感じない。

そんな依舞稀を見て笑う遥翔にしても同じだ。

自分たちの出会いが父親に仕組まれたものだと知れば、遥翔は息巻いてくると思っていたのだが。

「何も言わないのか?」

誠之助の問いに、遥翔は怪訝な顔をして「なにがだ?」と聞き返した。

「お前たちの出会いは私の手によって作られたのものだ。お前たちが自分たちの結婚までの道のりを運命だと感じていたのならば、私は許されないことをした。その自覚はある」

項垂れたように俯いた誠之助を見て、ずいぶんと小さくなったものだと遥翔は感じた。

あんなに大きく感じていた父親は、いつの間にか自分が支えてやらねばならないほどになっていたのだ。
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