片思いのあなたに再会してしまいました
「私がずっと逃げ続けてしまったせいで、恭さんにずっと辛い想いをさせてしまったことを私はすごく後悔しています。
本当にごめんなさい。
そして、私は他の人のために自分を苦しめてしまうほど優しい恭さんのことが、
昔も今も、大好きです。」

やっと、やっと、伝えられた。
大学2年生19歳からの想いを、ちゃんと全部伝えられた。

目の前の恭さんはただ呆然として何も言わないけれど、それでいいと思った。
返事とか、将来のこととか、何もいらない。

「急にいろんなことを言ってしまってごめんなさい。でも恭さんが行ってしまう前にちゃんと伝えておこうと思いました。
返事とか、そういうのはいいんです。
ただ聞いてもらえただけで、嬉しいです。」

私はちゃんと明るい声を意識してそう伝えたあと
二次会に行きましょう!と恭さんに声をかけて歩き出そうとした。

そのとき、恭さんが私の腕をつかんだので振り返ると、恭さんはうつむきながら話し始めた。

「俺、ずっと罪悪感だと思ってた。
俺は石田の気持ちに気づいてて、だけど知らないフリをした。
そしたら石田はあんなに仲が良かったのに、サークルの同窓会にも、真帆の結婚式の二次会にも来なかった。
俺のせいで、石田は来られないんだろうなって、そういう罪悪感なんだと思ってた。

石田が仕事だって割り切って接するのは当たり前だってわかってはいるのに、柴田さんって呼ばれるたびに何か痛くて。
全部俺のせいなんだなって思うと辛くて。

俺は石田が謝ってくれたって、やっぱり俺が悪いって思うし、石田に対する罪悪感だってすごくある。だけど……
石田が大好きだって言ってくれることが、何よりもすごく嬉しくて仕方がない。」

恭さんの告白はなんだかすごく痛くて、辛くて。
そして恭さんは静かにだけど涙を流していた。
けれどその顔は私が見たくなかった表情はしていなかった。
泣いてるけれど、ちゃんと、出会った頃みたいな笑顔だった。

恭さんはずっと握っていた私の腕を引くと、同窓会の日みたいに私をぎゅっと抱きしめた。
だけどあのときの性急さはなく、すごく優しくて暖かかった。

結局その夜、私たちは二次会には行かなかった。
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