片思いのあなたに再会してしまいました
私は深呼吸をして、目の前の恭さんをしっかりと見る。

奇しくもここは3回目のデートで告白が出来なかったときと同じ場所。
今度こそちゃんと全部を伝えたい。

「私、大学生のとき、よく恭さんをご飯とか遊びに誘いましたよね。LINEもたくさんして。
恭さんはきっと気がついていたと思うけど、
私はあのとき恭さんのことが好きでした。」

恭さんは少し身じろぎをした。

「だけど、私はこの気持ちを伝えることができませんでした。全部全部私が臆病で、傷つく勇気がなかったからです。私はただ何もせず逃げていました。」

何もせず逃げていたという言葉に恭さんは強く反応した。
槙さんが恭さんも自分が何もせず逃げたことの不甲斐なさを後悔していると言っていた。
だから、違うよ、と彼は言ったけれど私はその言葉を即座に否定した。

「違くありません、恭さんは何も悪くない。
ただ私が悪かった。
恭さんと会うと感情がごちゃごちゃになって、泣いてしまいそうだからって、それでずっと恭さんに会わないように意識していました。
相手のことは考えず、ただただ自分可愛さだけで。」

恭さんが何も言わないのをいいことに私は話し続けた。
一度止まったら、もう次の言葉をつむげないとそう思ったから。

「4月に恭さんと再会したとき、本当に驚いてどうすればいいかわからなくなりました。
だからとにかくお仕事の相手だと思って、それならなんとかやっていけるような気がしました。
こんな歳になってもまだまだ逃げ続けて、
恭さんを追い詰めてしまいました。」

恭さんがあのとき私を抱きしめたのは、
愛情なのか罪悪感なのかわからないと言っていた彼の感情が爆発したからなんじゃないかと思っている。
紛れもなく私がずっと逃げ続けていたことに原因がある。

ちゃんと言わなくちゃ、全部全部。
あなたと私が解放されるために。
ちゃんとそれぞれが前を向けるように。
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