レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「お父さま……。ですが,プレナからの使いの方が,まだレムルの町に滞在しているんです。このことを早く報告しなくては」
宿の名前は大臣に伝えてある,とリディアは父に言った。
「では大臣に,私の名代(みょうだい)として伝えに行かせよう」
イヴァンは大臣を呼び,プレナの使者が滞在している宿に行ってくれるよう頼んだ。
「命じた」のではなく,「頼んだ」のである。
「――ところで,お父さま。スラバットへはどういった理由で行かれたのですか?」
リディアは単刀直入(たんとうちょくにゅう)に,気になっていたことを父に訊ねた。
「どのような,とは?」
「外交の目的です。わたしは何も聞かされていません。だから知りたいのです」
リディアが畳みかけると,父は何とも言いにくそうにやっと口を開いた。
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