レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
ぷりぷり怒りながら,デニスは階段をドスドスと上がっていく。ちなみに,デニスの部屋は二階,ジョンの部屋は一階のそれぞれ二人部屋である。
「――褐色の肌の王子,か……」
デニスは自分の容姿をジョンと比較(ひかく)して,いつも劣等感(コンプレックス)を抱えている。生粋(きっすい)のレーセル人であるジョンの白肌・金髪に対し,スラバットとの混血(こんけつ)である自分の褐色肌・赤髪が(にく)らしかった。
アイツ(リディア)は,なんでオレのことを……?」
自分のこの異国風(エキゾチック)な容姿に()かれたのだとすれば,その王子にだって――。何せ,容姿が似ていたってこちらは一介(いっかい)の軍人,あちらは一国の王子だ。身分が違いすぎる。
(オレ,リディアのこと守りきれるかな)
――それから十日間,デニスは悶々と悩みながら過ごした(のち),国賓としてスラバット王子を迎えることとなった――。
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