レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。

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――食事が済むと,三人は早速(さっそく)行動を開始した。港の近くに漁協や船乗りの組合が入る建物があるというので,ジョンは一人でそこへ行ってしまった。
リディアとデニスは,入港してくる船の乗組員から話を聞くために,桟橋(さんばし)で待っていたのだが……。
「リディアの髪留め,昨夜のと同じだな」
やや不機嫌そうに,デニスが言う。どうやら,恋敵(ジョン)から贈られた髪留めを彼女がしているのがお気に()さない様子である。
「もう,デニス!妬かないの!別に,物に罪はないんだからいいでしょう?」
「ハイ,そうっすねっ!」
半ばヤケのように,デニスは吠えた。これでは,「妬いている」と認めているようなものだ。
(これで本当に,わたしと同じ十八歳なのかしら?)
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