レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
リディアは首を傾げる。同じ年齢なのに,ジョンとどうしてこうも違うのかしら,と。
リディアもジョンも,しっかり者の部類に入る。ことにリディアは,一国の未来を背負う姫であるため,嫌でもしっかりせざるを得なかった。
けれど,デニスはまだまだ子供のままだ。責任感は強いけれど,それ以外は……。
――にわかに,港周辺が騒然とし始めた。漁協の建物に行っていたはずのジョンも,何だか慌てた様子で桟橋の方に駆けてくる。
「どうしたの,ジョン?そんなに慌てて」
「姫様,それが……。対岸から妙な船が近づいてきていて。住民達が騒ぎ出していて」
「妙な船!?」
対岸というと,プレナの方だ。
その大きな一(せき)の船は,あっという間にシェスタ港に接岸した。
マストには,黒地に白い骸骨(ガイコツ)が描かれた大きな(はた)(かか)げられている。
「……!あれは,海賊旗(ジョリー・ロジャー)!?」
その船は,まさしく海賊船だったのだ。
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