レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「ああ,そうね……。じゃあ二人とも,外に出ている住民に,建物の中に避難(ひなん)するように呼びかけて。『海賊が来たから,外にいたら(おそ)われる』って」
「了解っ!」
「分かりました」
二人は町中を駆け回り,外を歩いている人々に,大声で海賊が現れたことを伝えて回った。自分達は帝国の兵士だ,と。
「この町は,どうなってしまうの?」と(おび)えたように訊ねる老婆には,ジョンが「大丈夫です。我々と姫様が必ず守りますから」と力強く答えていた。
二人がリディアの元に戻ると,海賊の頭が「この町の町長を呼べ」と(さけ)んでいた。
「私が町長ですが……」
現れた町長は,見るからに気弱そうな,小柄で線の細い男だ。頭の前に立った時点で,既に足がすくんでしまっている。
「よう!アンタが町長か?俺達ゃアンタに頼みがあるんだがよ」
「な,何でしょう?頼みとは……」
< 81 / 268 >

この作品をシェア

pagetop