俺様専務に目をつけられました。
暫く彼女の後ろに立ち仕事の様子を見ていた。PC作業はほぼ完ぺきか。

その時、電話が鳴った。

「おい、電話出てみろ。」

相変わらず俺には愛想の無い返答しか返さない彼女に腹が立ち、いたずら気分で電話対応を言いつけてしまった。彼女は一呼吸置き受話器に手を伸ばした。


【お待たせいたしました。東郷商事海外事業部でございます。】

日本語での対応は慣れていた。だがここは海外事業部、電話を受ける相手の約半分が外国人だ。
彼女が息をのみ込むのが分かった。
相手が外国人だったのだろう。あまり下手な対応をされると社の信用にも関わるなと思い受話器に手を伸ばしかけた時、予想外にも彼女はスラスラと英語で対応し出した。

【Thank you for calling. Mikuri speaking. How can I help you?】

総務課では経験したことも無いであろう。ビジネスとしては及第点だが臆せず対応する彼女に驚いた。

俺の中で一気に彼女、三栗晴香の存在が大きくなった。お嬢様との結婚んなんてお断りだ。
俺はその日以来、何かと用事を言いつけ彼女を専務室に呼んだ。しかし彼女が俺に向ける態度は一向に変わらない。

俺を眼中に入れない彼女が欲しくなった。俺には向けないあの笑顔を俺にだけ向けさせたくなった。
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