俺様専務に目をつけられました。
今日は久々に仕事が早く終わりそうだった。彼女を食事に誘おうと思い、いつもの様に必要のないペンと紙を持って来るように伝えた。

しかし専務室を訪れた彼女は

「すみません、後の用もありますので間違っていればご連絡下さい。手の空いている者に持ってこさせますので、では失礼します。」

と足早に去って行った。俺が『おい!』と声をかけても止まる事無く。

ドアがパタンと閉まると斜め前のデスクで仕事をしていた高杉が『プッ』と噴出した。

「あー、おもろ。享祐がここまで手こずるなんてな。しかし、お前は小学生か。」

高杉は俺の専属秘書だが親友でもある。だから仕事を離れれば俺に対しても言いたい放題だ。

「お前なあ、会いたいからって用事言いつけて毎日部屋に呼ぶか?普通。プッ、しかも毎回こっぴどく振られてるし。いやー、俺も三栗ちゃん気に入ったわ。」

「三栗ちゃんって・・・。それに会いたいから呼び出してるんじゃ・・・。しゃあないやろ、こうでもせんと接点ないんやから。」

「なあ、もう会長に頼んで予定組んでもろたら?会長も喜んで動いてくれるやろ?それに社長もまた何か動き出してるみたいやし。」

確かに爺さんに言ったら喜んで茂ちゃんに連絡を取るだろう。しかし俺の中のプライドが人に頼む事をすんなりと受け入れられないでいた。
その日の夕方、俺には見せたことのない笑顔で海外事業部の同期の男と楽しそうに帰って行くのを見るまでは。




「圭吾、実家に寄ってくわ。」

「おっ、やっと動くことに決めたんか?」

車に乗り込み運転席に座る親友に伝えた。
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