俺様専務に目をつけられました。
専務の言っていた三日には予定が空かなくて結局お正月は一緒に初詣に行けなかった。
年明け会えたのは十二日。いつもの様に前日の夜、連絡が入った。

【やっと休みが取れた。明日から一泊で城崎温泉に行くぞ。十時に迎えに行くから用意しとけよ。】

家にお泊りはあっても旅行は初めてだ、楽しみ。直ぐに返事をし旅行の準備を始めた。


翌日、専務はいつも通り予定の五分前に迎えに来てくれた。
車を走らせること約三時間、城崎に着いた。チェックインには少し早いので旅館に車と荷物を預け、お昼ご飯を食べがてら城崎の町を散策する事にした。雪こそ積もっていないが大阪よりも風が冷たい。


「外湯、今日は行かないからな。」

「えっ、せっかく城崎来たのに行かないんですか?」

「あほ、外湯めぐってたら一緒にいる時間減るだろ。その代わり部屋に露天風呂付いてるから一緒に入ろうな。」

家でも一緒にお風呂に入りたがる専務、最初こそ抵抗してたけど最近では一緒が当たり前になってきてしまった。私はまだ慣れないが・・・。


「享くん、でも急なのによく部屋取れましたね。」

「そこはコネを使った。だから一番いい部屋らしいぞ。晴香、カニ好きだろ?夕飯も楽しみだな。」

さすが専務、いろんなコネクションあるんだろうな・・・。




一泊二日の初旅行はあっという間に終わってしまった。料理もおいしかったし、お風呂も最高だった。ただやっと一緒の時間が出来たのに別々に風呂に入るのは嫌だという専務のおかげで大浴場には行けなかった。三時にチェックインして十一時にチェックアウトするまで、ずっと二人で部屋にいた。しかも食事をする時間以外は私を腕の中から離さなかった専務。

専務の誕生日以来、本当に溺愛って感じで甘い専務だが今回はいつもとちょっと違うような気がする。そんな専務を見ていると会社で耳にした噂を思い出し暗い気持ちになってしまう。
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