夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

そして、ある事件が起こる。
天使の一族の主人が別の女性と関係を持ち、本妻以外の女性に子供を産ませてしまった。
更なる悲劇は、その愛人との間に産まれた娘が、歴代のどの人物より勝る不思議な力を持って産まれて来てしまった事。
その上あろう事か、主人は仕事上の政略結婚で結ばれた本妻よりも愛人の方を深く愛してしまったのだ。

それは禁忌(タブー)を犯した天使の一族に与えられた呪い。
真実(ほんとう)に愛する者とは、決して結ばれないという呪い。

しかし、主人の気持ちとは反対に想いを寄せていた本妻は深く傷付き、哀しみにくれた。
それを見た主人と本妻の間に産まれた息子は、母の為に"邪魔な存在"を消す事を決める。

『死よりも苦しい地獄の日々を与えてやろう!
父上を奪った女の娘。そんな卑しい娘には娼婦になるのがお似合いだーー』

部下に命じて、裏切った父親の命を奪い。
愛人の娘を、娼婦の館へと売り飛ばした。

当時、僅か12歳で残酷な決断を下した本妻との息子ーーその名は、シャルマ。
僅か10歳で母を奪われ、娼婦の館へ売られた愛人との娘ーーその名を、アンナ。と言った。


……さあ、もうお分かりだろうか?
では、見届けてほしい。
我々一族の……。

ーーいや。
私の息子が数々の苦難を乗り越えて、明るい里へ辿り着けるのかを……。
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