Karma

男の叫び声が教室に響く。


飯嶋翔(いいじまかける)君だ。


翔君は暗闇の中を進み、映写機の近くにいた凪に襲いかかる。


ガタッと映写機が倒れる。


その光はスクリーンから凪と翔君にうつる。


大きな影が黒板に映し出され、倒れたせいで壊れたのか、映写機は点滅する。


翔君の影は何度もナイフを凪の影に振り下ろす。


何度も。何度も。


私は動くこともできず、ポケットにあるメモを握りしめていた。


そのメモは凪からだった。


「おい、どうしたんだよ翔…」


その声と同時に、誰かが電気をつける。


その瞬間、悲鳴が上がる。


血のしたたるナイフを握りしめる翔君。


足元には、胸から床が真っ赤に染まるほどの血を流し、倒れる凪がいた。


凪はぼんやりと目をひらき、その目からは、すでに光が失われていた。


「ち、違う。俺は殺してない…」
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